歴史絵巻を描く壮大な収束型シナリオ|20枚シナリオの書き方事講座

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第19回:”歴史絵巻を描く壮大な収束型シナリオ(ジルオール)”

■ロールプレイングゲーム(RPG)は数あるジャンルの中でも

物語性への依存度の高いジャンルと言えますが、そのシステムの性質故に、物語の描き方に工夫が要求されるものでもあるのです。
多くの方はRPGと聞いて、いわゆる『剣と魔法の世界』=ヒロイックファンタジー的な世界観を思い浮かべるでしょう。実際ヒロイックファンタジーというストーリージャンルとRPGというゲームジャンルは非常にマッチングしていると言えます。
元々、コンピュータゲームのジャンルとしてのRPGは、ヒロイックファンタジーを題材としたテーブルトーク・ロールプレイングゲームから発生したものですが、それだけがRPGのヒロイックファンタジーへの親和性を意味するものではありません。



殆どのRPGで採用されているシステムに、経験値によるレベル制があげられるでしょう。これはゲームの進行における主人公の成長度合いを現しています。主人公は戦闘や謎解きなどの行動で経験値と呼ばれるポイントを獲得し、そのポイントが一定量蓄積することでレベルアップ=成長するわけです。
RPGの主人公は、このレベル制によって飛躍的な成長(戦う能力やスキルの獲得)を繰り返すことになります。レベル上限を設けているゲームも数多くありますが、多くの場合、ゲーム開始当初から比較してレベルが最大値に達した主人公の能力は文字通り桁違いに上昇している場合が殆どです。



■RPGの多くがファンタジー世界を舞台とするのも

主人公=プレイヤーの成長システムが現実的な領域を超えて進歩することに、その世界としてのリアリティを持たせるために適していると言えるように思えます。
まさに神がかり的な領域までの成長を体験できるのがRPGの醍醐味であり、実際にRPGのストーリーもまた、最終的には世界の命運をかけて、その世界を滅ぼそうとしたり支配しようとする存在と戦うというものが大半を占めています。
しかし、そこにRPGのシステムが持つ、ある種の制約がかかってくるのも事実です。

その制約とはなにか。

■前述の通り、RPGは用意された舞台(世界)の中に主人公があり

プレイヤーはその視点から世界を見聞きし、行動することでゲームが進行します。つまり、主人公視点から見た世界はそのままプレイヤー自身の等身大の世界に類するとも言えます。
一方でゲームの世界は主人公の行動がその進展の鍵となります。先にお話ししたキャラのレベル制は、プレイヤーキャラの行動を制限し、レベルに合わないエリアやダンジョンへの進入を防ぐ役割を果たしますが、同時にプレイヤーキャラの行動は、そのままストーリーの進行へとつながっていくのです。逆に言えば、主人公が(ストーリーに関する)行動を起こさない限りは、物語は停滞し続けるわけです。



いずれにせよ、RPGは主人公の目から見た出来事が描かれることで展開するため、直接主人公=プレイヤーが目撃するのは、自分の身の回りで置きている出来事になります。この事が、ストーリーそのもののスケール感を狂わせる原因ともなっていると言えるでしょう。
この問題に真正面から取り組み、成果を上げているタイトルの一例として、『ジルオール』を上げることが出来ます。



『ジルオール』はコーエー(現在のコーエーテクモ)が開発・販売したロールプレイングゲームです。コーエーと言えば、『信長の野望』や『三國志』等、歴史シミュレーションゲームを得意とする会社ですが、この『ジルオール』も、コーエーらしい視点から描かれたシナリオが非常に秀逸なことでも知られます。
『ジルオール』のシナリオは、特徴的な『収束型』で構成されています。以前説明したマルチシナリオの類型で説明するなら、”末広がり”型の正反対の形と言えるでしょう。

このゲームのスタート地点(シナリオの起点)は複数存在

■プレイヤーはそれぞれの起点でそれぞれの立場にいる

一介の冒険者としてストーリーを開始しますが、やがて彼(彼女)は、舞台となる大陸を二分する戦争へと巻き込まれ、その戦争を仕組んだとされる皇帝ネメアの真の目的を知ることになります。
それぞれの事情を抱え冒険の物語へと飛び込んでいった主人公が、やがて時代の大きな波に飲まれるようにひとつの結末へ向かっていく、その物語の集約性は、スタート地点を替えてリプレイを繰り返す程はっきり見えてくるようになり、ストーリー全体の厚みを感じさせる作りになっています。



『ジルオール』のシナリオの注目すべきもう一つの特徴は、ストーリーを牽引する”主役”が、実は主人公=プレイヤー以外に存在していることでしょう。
無論、主人公は伝説にも語られる特異な能力の持ち主としてストーリー上でも重視されるのですが、この物語を歴史絵巻と捉えた場合、時代を牽引する役割を担うのは自分ではなく、戦乱の首謀者である皇帝ネメアというキャラクターなのです。



■主人公はそのネメアの行動を第3者として見守ることになるのですが

この視点が、物語全体を俯瞰して見せる、歴史物語的なイメージをストーリーに与えることに成功しているのです。
『ジルオール』はロールプレイングゲームのシナリオ構成としてかなり優れた作品です。初代PS版では制作の都合で予定されていたシナリオ(イベント)の半数以上がカットされているそうですが、後にそのカットされたシナリオを補完したリメイク版がPS2とPSPで発売されていますので、これからプレイしようという方にはそちらをおススメします。
次回はゲームならではの制約(お約束)を逆手にとって見せたストーリーでプレイヤーを驚かせたファーストパーソンシューティングゲーム、『バイオショック』を紹介致します。

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