シナリオ・感情表現|20枚シナリオの書き方事講座

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感情表現

■登場人物が何を考え、何をしようと思っているか

その感情を上手く表現するにはどうすれば良いでしょうか? 思っていることを全てセリフで言い表すことは容易いのですが、それでは実に味気がありません。しかもそのセリフが本当かどうかも実に怪しいものです。
特に感情が高ぶっている時は、ついつい本音とは別の言葉が出てしまいがちですよね。
ここでは、映像作品ならではの感情表現について触れていきたいと思います。

リトマス法について

リトマスとは、そうあの小学校の頃に理科の実験で登場したリトマス液のことです。
チョンと垂らすことで、それが酸性なのかアルカリ性なのか判別できるリトマスの原理をシナリオで活用する方法がこの「リトマス法」です。
つまり人物や小道具、事故、事件などを置くことで、登場人物の感情や人格などを浮かび上がらせるのです。



@人物をリトマスに使った表現

太郎が一人、道で佇んでいます。それだけでは、太郎が何を考えているのか何も伝わって来ません。そこで、担任の今日子先生を登場させてみましょう。これがリトマスの役割を果たします。


「あら、太郎くんじゃない。どうしたの? こんなところで」

そう言われて太郎は、

「ううん。今、帰るところ。あの、先生、辞めるって本当なの?」

と、言って俯きます。



今日子先生が登場するまで何を考えていたかわからなかった太郎ですが、今日子の登場させることで、先生が辞めるかも知れないという心配で先生の帰りを待ち伏せていたことがわかりましたね。今回は、非常にわかり易い例としてあげましたが、リトマスを巧みに使うことで説明的だと感じさせずに人物の心情を表現することが出来るのです。



A小道具をリトマスに使った表現

小道具を上手く使えばセリフが無くても感情を表現出来ます。次に小道具をリトマスに使った例を挙げます。
学校から帰ってもどこか元気のない今日子。しかし、なぜ元気が無いのか観客はまだわかりません。そこで、指輪をリトマスとして登場させてみましょう。
引き出しからおもむろに小箱を取り出す今日子。溜息を吐いて箱を開けるとキラキラと輝くダイヤモンドの指輪です。これは、明らかに婚約指輪でしょう。
今日子は、指輪をいったん指にはめてみつめますが、直ぐに外して箱にしまい、気を取り直して子どもたちのテストの採点を始めます。



ただ一人でぼんやり机に向かっていても表現できなかった、今日子の微妙な心情が浮かび上がって来ましたね。今日子先生は、きっと仕事か結婚か思い悩んでいるのでしょう。そして、今日のところはひとまず仕事を優先した今日子の女心が表現できました。
この様に小道具を利用した映像表現の方がセリフで表現するよりもがずっとリアリティがあります。登場人物の心情を引き出す際には、このように小道具を上手く使った映像表現を心掛けましょう。



B事件・事故をリトマスにする

事件、事故等を引き起こし、その対象となる人物がいかなる対応を取るかで彼の感情や人格を表現する方法です。
今日子の恋人は、高級外車を乗り回す若きエリート営業マンです。このまま行けば次期専務の座は間違い有りません。友人からの評判も良く、今日子にもとてもマメに連絡してくれます。浮気しそうな気配も微塵も感じさせません。
完璧なぶん、観客としては、どこかつかみ所のないキャラと映るでしょう。
そこで、(可哀想ですが)彼にうっかり飛び出してきた老人をひいてしまう事故を起こさせましょう。するとどうでしょう? 彼はまだ息のある老人の前でワナワナ震えるばかり。遂には誰も見ていないことをいいことに車に乗って逃げ去ります。男は電話をして、対処を相談します。



「ママ、どうしよう。ぼく、人をひいちゃったんだ」

彼は実は、極度のマザコンだったのです。
事故を一つ起こすことで彼の素の人間性や感情を引き出すことに成功しました。
この様に事件・事故もまたセリフに頼らない感情表現として非常に有効です。



<補足>公私を描き分けよう!

人は、会社や学校などの社会で活動している時と、一人自室にいる時では違う顔を持っているものです。よくお笑い芸人が、家ではとても暗いというような話をされていますが、要はそういった二面性を持たせることで、リアルな人間を描くことが出来るのです。
それが公私を描くということです。先述の今日子の恋人にしても<公>だけを描いていては、彼の気弱でマザコンである一面は描くことは出来ませんでしたね。
登場人物に隠された<私>にもしっかりとスポットを当てることをお忘れなく!

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