シナリオ・「起」の書き方|20枚シナリオの書き方事講座

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■ 今回は、実際に起承転結の「起」について説明してまいります。

「起」は言うまでもなく物語の導入部でありここが退屈な作品は、最後まで読んで貰えないことさえあるでしょう。クライマックスに向けて最高の入り方を考えて下さい。



■<張り手型と撫ぜ型>

起は小説で言うところの一行目です。名作と言われる小説が、どれも印象的なものであるように、起はその作品の印象を決定づける大切な部分です。
シナリオを書き始めて間もない方々は、何となく思い浮かんだ最初のイメージをそのまま書き進める方が多いのですが、一度じっくりとそれが最善の「起」なのか疑ってもみて下さい。
さて、起の書き出しは、「張り手型」と「撫ぜ型」の2つあります。



■<張り手型>

貼り手型とは、冒頭から観客(視聴者)に張り手を食らわせるかのごとくインパクトのあるシーン、事故、事件から描き始める方法です。
例えばいきなり平和な街が大爆発を起こせば、一気に観客の気を引きつけることが出来ますよね。そして謎を秘めながら、主人公がグイグイとストーリーを引っ張っていけば、観客は目が離せなくなります。
舞台がどこであるか、どうしてそんな状況に陥ったのか、そんな情報は全て後回しにして、まずは観客の目をスクリーンに釘付けにする手法です。
例えば、若い世代を中心に大ヒットした映画『バトル・ロワイアル(深作欣二監督)』では、冒頭でいきなりヴェルディのレクイエムの大合唱が鳴り響くや否や、R15+指定作品であることが真っ赤な文字で大きく表示され、次に護送される車内で血みどろの少女がニヤリと不気味に笑うシーンから始まります。



さらに次のシーンでは、藤原竜也さん演じる七原秋也のモノローグと共に七原が父親の自殺しているのを発見するシーンが続き、今度はビートたけし演じる教師キタノがいきなりナイフで刺されるシーンへと展開されます。
何がどういう状況なのかはよくわかりませんが、とにかく観客は、一気にその世界に引きこまれてしまいますよね。思わずやりかけの宿題もほっぽり出してしまいそうです。
作品自体は、好き嫌いがはっきりと分かれる作品ですが、この張り手型のオープンニングは観客を魅了する巧みさがありました。



このような「張り手型」はどちらかと言えば、テレビ作品でより多く使われます。
テレビは少しでも退屈に感じてしまうとリモコンで直ぐにチャンネルを変えられてしまうものです。冒頭で『バトル・ロワイアル』のように視聴者の目を釘付けにしてしまえば、いきなりチャンネルを変えられる心配はないでしょう。
しかし、一方で張り手型は、事件の概要や人物の情報などを全て後のシーンで説明しなければならなくなります。せっかくファーストシーンで観客の目を引きつけても、後の説明をだらだら描いていては興ざめです。
「バトル・ロワイアル」ではそうならないために、映像が始まる前にその世界の基本的な概念を文字で提示することで後の説明をコンパクトに収めています。




張り手型は、アクションやサスペンス、コメディなどでは特に有効です。



一方でこれとは真逆なシーンから入る方法があります。



■<撫ぜ型>

撫ぜ型とは、淡々としたシーンから入り、じっくりと作品の世界を見せながら観客を物語に引き込む方法です。
迫力はありませんが、張り手型には出せない美しさや叙情を描くが出来ます。また、登場人物の性格やその間柄も自然と把握出来るのも利点の一つです。
しかし、上手く書かなければダラダラとした退屈なシーンになる危険性をはらんでいます。
若かりしブラッド・ピットのさわやかな魅力に溢れた映画『リバー・ランズ・スルー・イット』は、穏やかな川で老人がフライフィッシングをしているシーンから始まります。次にセピア色の写真たちが入れ替わり現れ、主人公たちの少年時代をじっくりと描かれていきます。インパクトはありませんが、美しい田舎の風景いと共に主人公の家族関係がよくわかります。
映画の場合は、シーンとして迫力に欠けていてもチャンネルを変えられる心配はありませんし、どちらかと言えば映画向きだと言えます。特に人の心の成長や変化をじっくり描く作品に向いているかもしれませんね。

起を面白く書くコツ

起の機能は、その作品の登場人物が誰で、舞台となる時代や場所がどこであるか、主人公は何を考えて何を目的にしているのかを明確することです。
さらに、作品のテーマとなる考えをそこにしっかり織り込んでおく必要があります。
起を面白く書くには、クライマックスを想定してどんな起が一番効果的なのか考える必要があります。例えば「友情は何にも変えがたいものである」というテーマで作品を書くならば、クライマックスはかけがえの無い無二の親友との別れがクライマックスになるかもしれません。



そうすると、起の部分では誰にも心を開かない孤独な人物として主人公を描いてはどうだろか、そうすればクライマックスの主人公との対比がより鮮明になるぞ、というふうに逆算して考えることが可能になるのです。
孤独な少年がある日、後に親友となる少年と運命的な出会いを果たす。やがて二人は同志として敵に立ち向かうことになるが、やがて運命のいたずらにより二人は敵味方に別れてしまう。最後は友情のために仲間を裏切った親友は命を落とす……というように。
今のは、少しありきたりな発想でしたが、テーマからクライマックスを考え、クライマックスから起を考える、この方法が機能的で面白い起を書くコツです。

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