コミュニケーション能力も必要|20枚シナリオの書き方事講座

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第4回:”コミュニケーションの能力も必要です”

■前回に引き続き、ゲームシナリオの制作に必要なスキルのお話です。

前回説明しましたプログラミングの技術は、実際に機械(パソコンやゲーム機)の上で稼働するゲームソフトの制作には必須のスキルでした。
今回説明するスキルは、実際に動くプログラムそのものに必要とされるものではありませんが、”制作する”ことにおいては、それ以上に重要な要素かもしれません。
その理解の前提条件として、ゲームの制作現場の実情を説明致しましょう。



皆さんもハリウッドの映画制作が、まずシナリオから始まることが多い、という事はご存知かと思います。
まず、エージェントと呼ばれる人たちがヒットしそうなシナリオを探し出し、映画制作会社とかけあって資金を調達し、監督や他のスタッフ、キャストが集められて、初めて実際の撮影が開始される……この場合、シナリオは劇中のストーリーの進展や登場人物のセリフの内容をただ記したものではなく、その映画そのものの企画書の役割を果たしてもいるのです。

こうして制作が開始された映画の制作現場には

■当然のことながら既に完成しているシナリオが存在しており

撮影はそのシナリオに従って行われることになります(勿論、撮影途中でシナリオの変更という事態が起こることもままありますが、あくまで前提として)。
ところがゲームの制作現場(あくまで日本国内の事例と捉えて戴きたいのですが)には、しばしば制作開始段階にはシナリオが存在していない事がままあるのです。




これは映画とゲームの制作のあり方が大きく違っていることに起因します。



後にまた詳細を説明致しますが、ゲームの場合、シナリオの分量は映画やドラマのそれと比較して、極めて膨大なテキスト量になるケースが多々あるのです。
加えて、ごく一部の例外を除き、ゲームは予算等の都合から、極めて限られた制作期間内で完成させなければならない事が圧倒的に多いのが実情です。(実際には決められた期間での完成が間に合わず、発売延期となるケースも良く見受けられますが)
そうした状況から、ゲームの制作では、シナリオの制作が他のセクションと同時進行で行われるという事がままあるのです。

無論、他セクションの制作作業開始時点で

■シナリオが完成しているのが理想ですが

それが難しい以上、シナリオライターはまず、シナリオの全体像を概要で示す必要があります。
設定書やシナリオプロットを準備し、物語の進行を管理するフローチャートという図面や、場面場面に必要となる素材を判断するための箱書きを作っておかなければなりません。
ストーリーがどのように進行し、どこで分岐し、いくつのエンディングがあるのか、その概要を他セクションのスタッフに周知しておかなければ、制作自体が立ちいかなくなってしまいます。それがなければどんな素材(グラフィックや音声等)をどれだけ、いつまでに準備しなければいけないのかが、分からなくなってしまうからです。
ですからゲームシナリオを制作するには、まずストーリー全体の概要を先にまとめる構成力、そして自分以外の制作スタッフにそれを提示し、理解してもらうためのコミュニケーション能力も必要になってくるのです。



ただし、これはあくまで商業作品を作る場合の話であって、例えば『ツクールシリーズ』(株式会社エンターブレインさんが開発販売している、ゲーム制作ソフト)を使うなどして、一人でこつこつゲームを作りたいというのであれば話は違ってきます。
もっとも、事前にプロットや箱書き、フローチャートを用意しなければ、作っているうちに頭の中がやわくちゃになって制作が立ちいかなくなる可能性が極めて高いとは思いますけどね。
これは筆者がシナリオ制作を担当した、とある現場で体験した実例ですが、そのゲームの企画者から渡された、あるヒロインのシナリオ企画書のラストがこんな文言で締めくくられていたことがあります。



「彼女の運命やいかに?」



……映画の予告編や小説の広告などでは、良く見かける文章ですが、実際にシナリオを書く立場としては、これ程困ることはありません。何しろ、結末がどうなるかきちんと提示してもらえていないのですから、これではエンディングシーンを書くことが出来ません。
仕方がないので当の企画者に尋ねたところ、帰ってきた答えはこうでした。



「さあ、どうなるんでしょう?」



要するに、彼はオチを考えていなかったのです。ストーリーを立案する立場の人間がストーリーの最後までキチンと考えなくてどうするというのか。正直、苦笑するしかありませんでしたね。結局、オチは筆者自身で考えて書かなければならなくなりました。
話をまとめますと、
ゲームのシナリオ制作者は、それがゲーム全体の設計図であり概要書であることを踏まえて、他セクションの制作者にシナリオの構造や意図、見せたい演出等を説明し理解を求めるための構成力やコミュニケーション能力が必要とされます。



これは一朝一夕で出来るようになるものでもありません。経験を積んで、相手が何を必要としており、自分がどういう仕様や情報を提示しなければならないか、一歩一歩覚えていくことこそが、結果的には最短の近道なのかもしれません。
次回からは、筆者が経験上最も多くシナリオ制作を担当してきたノベルゲームを事例として上げながら、ゲームシナリオを実際に制作する際に必要な事柄について、説明していきたいと思います。

 

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