マルチシナリオについて|20枚シナリオの書き方事講座

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第6回:”普通のシナリオとの相違点@……マルチシナリオについて”

■小説や映画のシナリオと、ゲームシナリオの最大の違いはどこか?

小説や映画にはない、ゲームのストーリーの最大の特徴は『マルチシナリオ』にあると言えるでしょう。
マルチシナリオとは、『分岐』し、エンディングや(場合によっては)オープニングがひとつだけではない、複数のストーリーラインを持つシナリオのことです。
ゲームにストーリーの分岐点が生じるのは、ゲームのストーリーの流れに、プレイヤーが干渉して変化を与えることができるからです。



誰もがよく知っている昔話『桃太郎』で説明してみましょう。
「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」から始まる桃太郎のお話、川に洗濯に行ったおばあさんが、大きな桃が川を流れて来くるのを見つけ、それを家に持ち帰っておじいさんと一緒に切ってみると、中から男の子が……というのが良く知られた桃太郎のお話ですね。
もし、あなたがおばあさんの立場にいたとして、あなたは桃を拾うでしょうか?
もしかすると『あんな大きな桃はちょっと怖いから、関わらないでおこう』と思うかもしれませんよね。あなたが桃を拾わずそのまま家に帰ったら、果たして拾われなかった桃太郎はどうなってしまうのか……。

小説にせよ映画やドラマにせよ

■登場人物が何を考え何を目的として行動するかは

その作者やシナリオライターの意志によって決定され、読者や観客はそれをただ見ていることしかできません。しかし、それがゲームの場合、そこに受け手=プレイヤーが干渉することが可能になるのです。
これが文章や映像といった、不変的な表現を用いる小説や映画と。コンピュータのプログラムによって、操作を可能とするゲームとの最大の違いであり、その制作に際し、最も工夫が問われるゲームシナリオの要点でもあるわけです。



おばあさんに拾われなかった桃太郎はそのまま海に流され、鬼ヶ島に流れ着くかもしれません。鬼に育てられた桃太郎は、おばあさんが自分を拾わなかったことを知って恨みを抱き、鬼の尖兵となって村に攻めてくるかもしれません。果たして村の運命はどうなってしまうのか……? おそらく、誰も知らない、そして誰も想像しないもうひとつの『桃太郎』の結末が、プレイヤーを待っていることでしょう。
プレイヤーの選択次第でストーリーが分岐し、その結果まったく想像しえない展開と結末を見せることがありうる。それはシナリオの分岐が多くなればなるほど、その可能性を大きくしていくのです。結末=エンディングは分岐点の数だけ増えていくということもできるでしょう。




エンディングのみならず、場合によってはオープニングすら複数ある。



複数の主人公が存在し、同じ出来事を別々の視点から描いていくことで、物語全体のディテイールを緻密に築き上げていく。これもまた、ゲームのシナリオならではの特徴です。
小説や映画を、一本の線上で推移していくリニアなストーリーとするなら、ゲームのシナリオは時に網の目のように広がり、その面全体でストーリーを描いていくことになります。そこにはリニアなストーリーでは本来描写されることのない場面や、切り捨てられる筈の要素が、本来想定されるストーリーラインとはまったく別個のストーリーを構築することもあります。



大げさな表現を敢えて用いるなら、世界という舞台上で展開するストーリーを描くのが小説や映画であるとするなら、ゲームのシナリオは、その舞台……即ち、世界そのものであり、ゲームのシナリオを作るということは、世界を創造する行為と呼べるのかもしれません。
次回は、実際にあるマルチシナリオの構造を数パターン紹介し、それぞれの特徴を説明致します。

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