メインシナリオとサブシナリオ|20枚シナリオの書き方事講座

お気に入りへのご登録はお済ですか? ⇒ 

第11回:”メインシナリオとサブシナリオ”

■ひとつのゲームに複数のストーリーラインが存在しうることは

これまで説明してきた通りです。それは直線的な構造のストーリーがちょうど網のように時に交わり時に別れながら、平面のように広がっていくとも言えます。
その構造を整理する方法として、前回は『地図と時間割』……例えば表を作ってキャラの移動や行動を図式化してみるやり方を紹介しました。



しかし、網を構成する直線=ストーリーラインが増えるほど、図式化による整理もより難しくなっていくのも事実です。また、複雑になるほど、一本一本のストーリーラインはぼやけてしまい、全体としてそのゲームがどのようなストーリーなのか、分かり難くなっていくという問題も生じてきます。
分岐とループを組み込むことでより意外性のある展開と深みをストーリーに加えることはゲームシナリオならでは特徴であり、ゲームでストーリーを表現することの醍醐味でもありますが、それで全体のストーリーがぼやけてしまっては意味がありません。



そうした問題を解消する方法として最もオーソドックスなやり方は、シナリオをその重要性に応じて差別化することです。
まずは、ゲーム全体としてのストーリー=メインシナリオを考えてみましょう。ゲームの紹介サイトや雑誌に掲載される、そのゲームのあらすじの事と考えればOKです。
前回の桃太郎の例で言えば『おじいさんとおばあさんに拾われた、大きな桃から生まれた男の子はやがて桃太郎と名乗り、鬼ヶ島の鬼を退治して宝物を持ち帰りました』……これが、全体のストーリー=メインシナリオです。この段階では分岐やループを考える必要はありません。

次に、このメインシナリオの肉付けとなる

■ストーリー=サブシナリオを考えます。

『金太郎は桃太郎の鬼退治の噂を聞き、先回りして鬼を退治してしまった』……サブシナリオはこんな感じになりますね。
メインシナリオは、そのゲームのストーリーの中心であり、軸となるものです。それだけに、しっかりと作りこむ必要がありますが、逆に言えば、軸がしっかりとしていれば、ゲーム全体でのストーリーの印象をブレることなくプレイヤーに伝えることができます。



サブシナリオはメインシナリオで描かれるストーリーに厚みをもたせ、展開を多彩にするための肉付けとなります。言い換えればメインシナリオの装飾、ということも出来るかもしれませんが、その重要性はシナリオを制作する者……つまりあなたの考え方次第です。
メインシナリオでは脇役に過ぎなかった人物が、メインシナリオでは描かれなかった場面で何をしていたのか、サブシナリオでそれを描くことによってメインシナリオの奥行きを表現することも可能です。



メインシナリオでは主人公が決して選択しえなかった、もうひとつの解決法を持って事件を解決する。そのことによって、メインシナリオで提示されたテーマに、アンチテーゼを示すことも出来ます。(金太郎は桃太郎から宝物を奪うか、それとも協力して鬼退治をするのか)
ただし、サブシナリオはあくまでメインに対してのサブであり、そのボリュームが逆転してしまわないよう、注意すべきでしょう。メインのボリュームよりサブのボリュームが大きくなってしまえば、主客転倒になってしまいます。

メインシナリオを複数用意する、という方法もありえます

■例えば、和製スペースオペラの代表作ともされる

田中芳樹の『銀河英雄伝説』は二つのメインシナリオ……王朝を打倒し自らが帝国の支配者となることを目指すラインハルト・フォン・ローエングラムのストーリーと、長い戦乱の中で衰弱化した民主主義体制を守ろうとするヤン・ウェンリーのストーリーから成立しているとも言えます。
これは二人の主人公のストーリーが同じだけのボリュームと重要性でバランスの取れた構造を成立させていることの現れです。



メインシナリオを複数用意することで、ストーリーはより壮大さや重厚さを増しますが、それにはバランスの取れたストーリーを複数構築しなければいけません。それは書き手にかなりの力量を要求するものですから、最初からやろうとするのは、あまりおススメはできません。
次回は、マルチシナリオの構築に役立つ技法『ストーリーのモジュール化』について説明する予定です。

おすすめの書籍とサイトはこちら