ストーリーのモジュール化|20枚シナリオの書き方事講座

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第12回:”ストーリーのモジュール化について”

■ストーリーを構築する方法論として

”モジュール化”という考え方を紹介したいと思います。
”ストーリーのモジュール化”は、SF作家の野田昌宏氏が書かれた『スペース・オペラの書き方―宇宙SF冒険大活劇への試み』(ハヤカワ文庫)という本の中で紹介している概念です。
『スペースオペラの書き方』は、他にもスペースオペラのみならず、娯楽小説を書こうとする際に使えるさまざまなテクニックや方法論が紹介されており参考になります。そしてなにより、一冊の読み物として、とてもおもしろい名著です。小説やシナリオを書かれようとしている方には、是非ご一読されることをおススメします。



さて、ストーリーのモジュール化とは、いったいどういう意味でしょうか?
そもそもモジュールとは工業製品などにおいて、複数の部品で構成されそれ自体まとまった機能を持つ、システム全体の構成要素を意味します。パソコンをひとつのシステムとすれば、マザーボードを始めとする各種パーツがそれに当たります。
部品をモジュール化することのメリットは、共通の標準規格のモノであれば様々な会社の様々な部品を、必要なスペックや用途に応じ、自由に選択して組み上げられることにあります。

長編小説を書こうとした場合

■長大な作品全体をひとつのものとして考え構成するのは

かなり複雑で面倒な作業になります。
その方法では構成の一部を変更しようと思っても、前後のつじつま合わせのために全体的な構成の必要が生じたり、構成がどんどん複雑化して整理がつけにくいと言った問題が生じ易くなってしまうのです。
ゲームの場合、小説等に比較して、ストーリーラインが複数存在するなど、シナリオのボリュームは膨大化することは不可避とも言えます。それは同時に構成上の問題がより生じ易くなることも意味しています。
そうした問題に対処するのに有効なのが、ストーリーのモジュール化、という考え方なのです。



前回作成した、桃太郎の進行表をもう一度見てみましょう。
表上のChapterと場所で示されるブロック(例えばChapter3-村)を1シーンと規定し、そのシーンで描かれる金太郎視点の場面を、簡単なあらすじとして書き起こしてみましょう。
姉妹サイト『小説の書き方講座・起承転結を使わない考え方』の中で紹介されています『I・D・C』(導入部・展開部・終結部)の概念に習って表記しますと、こんな感じになります。



導入部:おじいさんから『桃太郎は村に行った』と聞いた金太郎、急いで村までやってくる



展開部:茶屋の店先で昼寝をしている桃太郎を発見。
   仲間にしてもらおうと彼を起こそうとするが、ふと、考えが変わる。



終結部:このまま先回りし、一人で鬼退治すれば宝物を独り占めできる。
   そう考えた金太郎、桃太郎を起こさず一人で鬼ヶ島へと向かう



このまとまりがモジュールです。
複数のモジュールによって構成されるシナリオは、それ自体が当然IDCの構造を成しているわけですが、その部分を構成するモジュールもまた、IDC構造を持つわけです。見方をかえれば、ゲームのストーリーとはIDCの入れ子構造と言うことも可能かもしれません。
モジュール化の利点は、必要に応じて削除したり、モジュールを他のブロックへ移すことが簡単になることです。例えば、茶屋での場面を別の場所にしたいと思ったら、今作成したモジュールを該当するブロック(例えばChapter4-山道)に移動すればいいわけです。



■表上のどこにモジュールが配置されているかはひと目でわかりますから

それが他のモジュールにどう影響を与え変化するかも、管理しやすくなります。
基本的にボリュームの大きなメインシナリオは、複数のモジュールによって構成されるのですが、サブシナリオについては一個のモジュールで構成できる場合もあるでしょう。
場合によっては当初サブシナリオとして構成していたものをモジュールとしてメインシナリオに組み込むことも可能になります。



また、メインシナリオのモジュールとして構成していたブロックのボリュームが大きくなり、サブシナリオとして別個に構成した方が良い、ということになる事も、十分に考えうることです。
文章を作成するためのソフトにエディタがありますが、このエディタの中でも、ここで紹介したモジュール化の作業に適したタイプのものがあります。
いわゆるアウトラインプロセッサと呼ばれるものがそれです。アウトラインプロセッサは、全体の文章構成を先に作成した上で、ブロック化した細部の記述を追加していくことで文章を制作するためのソフトウェアです。



元々は長文のプログラムを効率良く作成していくためのものでしたが、ライターや小説家が長文制作を行うために利用することが多いのも知られています。
かつては『Story Editor』という、小説の制作に特化されたアウトラインプロセッサもあったのですが、残念ながらWindows7や8の環境には対応していないようです。
次回は、このSectionのまとめとして、もういちど、ゲームシナリオの特徴と小説や映画との違いについて、筆者なりの考え方を説明したいと思います。

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