マルチシナリオの類型|20枚シナリオの書き方事講座

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第7回:”マルチシナリオの類型”

■典型的なパターン

今回は、ゲームシナリオの最大の特徴であるマルチシナリオについて、典型的なパターンを図案を例に上げながら説明していきます。
先に、図案の見方を説明します。
図上の線はストーリーの流れです。シナリオ行は縦方向、上から下へ向かって進行します。
オープニングと書かれているブロックは、そのシナリオの起点となるイベント(出来事)を示します。小説ならプロローグ、映画やドラマにおけるアバンタイトルと捉えて戴ければOKです。



線上にあるイベントと書かれているブロックは、シナリオの分岐点が発生する劇中の出来事を現します。イベントでは、選択肢等を操作することでプレイヤーが任意で分岐を選択できる他、それまで重ねてきた条件によって、自動的に分岐が発生する場合もあります。
この自動分岐の条件付けをコンピュータのプログラム用語になぞられ、”フラグ立てる”と呼びます。ネットスラング等でお馴染みの『死亡フラグ』と、意味合い的には同じです。
エンディングと書かれたブロックは、シナリオの終結点を意味します。小説でいうところのエピローグですね。小説等と違い、エピローグが複数存在しうるのが、マルチシナリオの最大のポイントでもあります。



それでは、各パターンの説明を致します。
なお、ここで用いている各パターンの呼称は、あくまでここで用いる仮称に過ぎません。そのような用語が業界にある、というわけではありませんので、その点をご留意ください。

(1)串型(8の字型)

※図01(串)



マルチシナリオの最もオーソドックスでシンプルなパターンです。このタイプのシナリオでは、ストーリーに大きな分岐は存在しません。基本的にはいわゆる一本道のシナリオです。ところどころに分岐点が存在し、その選択によって発生するイベントに変化が生じますが、イベント後は再びひとつのストーリーラインに戻ることになります。
例えば学校に行くのに「近道をする」「遠回りをする」という分岐が発生、しかし結局は学校に行くという目的自体は変わらない、といった流れを想像して戴けるとわかりやすいかもしれません。



図では複数のエンディングが記されています。このエンディングの分岐条件を決定するのは、途中、どのイベントを通過したかで決定されることが多いです。そのイベントを通過(見た)ことが、前述しました”フラグを立てる”条件になるわけですね。
よりシンプルな構造のシナリオになると、このエンディング分岐のない=エンディングはひとつだけ、というものもあります。
比較的小規模なタイトルでは、作品全体のボリュームを抑え、かつストーリーの流れを明確にするため、この構造を取るタイトルが多いですね。また、いわゆるJRPGでは、この構造を取っているケースが一般的です。

(2)末広がり型

※図02(末広がり)



一般的に多く見られるマルチシナリオのパターンです。ストーリーの起点となるオープニングはひとつだけですが、分岐点となるイベントが多数配置され、ちょうど扇のようにストーリーラインが広がっていくのが特徴です。
このタイプのシナリオには、図にある横向きのライン(イベントCからエンディング1、もしくはエンディング3に繋がる横軸のラインを指します)が存在しないケースもあります。一旦分岐したストーリーラインが再び交わることなく個々のエンディングへと向かう形式は、初期の恋愛系(ギャルゲー系)のノベルに良く見られました。



横軸のラインを設けない末広がり型は、個々の縦軸のストーリーが他のラインと干渉しあわないため、作りやすいという特徴がありますが、裏返して言えば、個々のストーリーが単調化することも多くなり、全体として散漫な印象になりがちである、というデメリットもあります。
図に示したパターンではストーリーに横軸のラインが加わり、一旦分岐したストーリーが再合流する展開を含んでいます。こうすることによって、ストーリーの流れに予想外の展開を生み出し、全体的に密度の濃いストーリーを印象づけることができるというメリットが生じます。



ですが、この場合、縦軸のラインが交わり合う可能性がある分、ストーリーの流れに矛盾が生じないよう管理をしなければなりません。
例えば学校の帰り道、「まっすぐ家に帰る」「コンビニで買い食いをする」の二つにシナリオが分岐したにも関わらず、家に帰ってみたらどちらのルートを通ってきても買い食いをしたことになっていた……そんな矛盾が発生する危険性があるわけです。
ストーリーの分岐そのものをゲーム性に組み込むノベルゲームでは、特に良く用いられるパターンと言えるでしょう。

(3)あみだくじ型

※図03(あみだ)



複数のオープニングがあり、ストーリーラインがまるであみだくじのように交錯しながら進行するパターンです。
大作レベルのノベルゲームなどで採用されるパターンで、より複雑で変化に飛んだストーリーを楽しめるのが最大の特徴です。『街 〜運命の交差点〜』などが有名ですね。
ストーリーラインの交錯が複雑化するほど、意外性のある密度の高い物語を表現することが可能ですが、その分、シナリオの構築には細心の注意ときめ細かい管理が必要になります。下手に作れば簡単にストーリーが破綻してしまいます。シナリオの量も膨大になりますので、普通は複数のライターが制作に当たることになります。
次回は、『分岐』と共にゲームシナリオを制作するにあたって重要なファクターとなる要素、『ループ』について説明致します。

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