時間割と地図を書こう|20枚シナリオの書き方事講座

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第10回:”地図と時間割を作ろう”

■ ゲームにおけるシナリオの特徴である

『分岐』と『ループ』について説明して参りましたが、この二つの特徴を別の言葉で言い換えることもできます。
『分岐』は、直線的な構造の小説等と違い、ストーリーにが広がり幅を持つこと、とも言えるでしょう。すなわち、分岐とはシナリオの”横軸”になります。
『ループ』は、本来時間軸を過去から未来に向かって流れるストーリー(内容面ではなく、あくまでストーリーの進行として)に、過去へさかのぼる事、そして遡行した点から再び展開されるストーリーに前回とは違う展開が起こることと言えます。つまりループとはシナリオの”縦軸”でもあります。



直線構造の上で展開する小説等のストーリーに対し、ゲームにおけるシナリオは横軸と縦軸を持つ、面構造を持つわけです。
一次元(直線)的な構造と二次元(面)的な構造の違い……制作するに当って、まず問題となるのは、面構造であるゲームシナリオは、ストーリーとしてより複雑化しているということにあります。直線構造のストーリーを構成するにあたっては考慮する必要のない物語世界の事象がストーリーに影響を与えてくる可能性が生じるからです。



鬼退治に向かった桃太郎は三匹の仲間と出会いながら鬼ヶ島へとまっすぐ向かい、鬼を退治して宝物を得ますが、もし、桃太郎が途中で道草をしてしまったらどういうことになるでしょうか?
あるいは、どこかで鬼ヶ島の悪い鬼の噂を聞きつけた金太郎が、桃太郎に先んじて鬼ヶ島へと渡り、鬼たちを退治してしまうかもしれません。遅れて鬼ヶ島に到着した桃太郎は、当てにしていた宝物を奪われ、金太郎とケンカになるかも知れません。
ここで注意して欲しいのは、真面目な桃太郎がまっすぐ鬼ヶ島に向かうストーリーも、不真面目な桃太郎が途中で道草をして金太郎に宝物を奪われてしまうストーリーも、当然のことですが、それ単体としてはどちらも成立する、ということです。

しかしこの場合、二つの物語には決定的な差異が生じます。

■真面目な桃太郎のストーリーでは

最初から最後まで金太郎が登場することなく進行し、当然、そのストーリーの世界にあっては金太郎というキャラは存在していません。
一方の不真面目な桃太郎のストーリーでは金太郎が登場し、桃太郎とケンカになる。つまり、金太郎は一方の物語世界には存在しないが、もう一方では存在している。当たり前のことではありますが、それが二つの桃太郎の世界の決定的な違いと言えるわけです。
これがひとつのゲームの中で起こりうる分岐の結果として起こる出来事だとしたら、どうでしょうか?
桃太郎=プレイヤーが真面目なら、桃太郎は金太郎とは出会いません。しかし、そのゲームの世界においては、選択されなかったもうひとつの分岐の為に、金太郎というキャラはやはり存在していることになります。



真面目な桃太郎のせいで、出番のなかった金太郎ですが、二周目のストーリーでは、やはり真面目に鬼と戦って宝物をゲットした桃太郎が意気揚々と引き上げる、その途中で宝物を奪いに現れるかもしれません。
ゲームのシナリオを構築するに当ってまず念頭に置くべきは、この『横軸』と『縦軸』の変化によって、ストーリーの流れにどのような変化が生じうるのかを整理し、いかに変化したストーリー同士の関係に矛盾が生じないよう、考える必要がある、ということです。
頭の中で考えるだけでは、内容が混乱して整理がつかないということにもなりかねません。
ここで、ストーリーの地図と時間割を作ってみることをお勧めします。と言っても、詳細な地図そのものや、分単位の細かい時間割が必要、ということではありません。



■例として、表を作ってみましょう。

表の縦軸は時間の進行、横軸は場所の移動を示すと考えてください。大雑把なくくりで構いません。参考として上記の例にならって、桃太郎が鬼退治に出発してから退治が終わるまでを表にしてみましたのでご参照ください。
表上の記号は、登場人物の動きを示します。
各チャプターの記号はその人物がそのチャプターではどの場所にいるかを示します。



●=真面目な桃太郎

○=不真面目な桃太郎

▲=桃太郎が真面目だった場合の金太郎

△=桃太郎が不真面目だった場合の金太郎




表を見ると、Chapter3の村がキーポイントであることが分かります。上記の事例通りなら、金太郎はサボっている桃太郎を見つけ、彼を出し抜こうと先に鬼ヶ島に向かいますが、金太郎の視点から描くシナリオがあるとすれば、ここで桃太郎に声をかけ、一緒に鬼が島に向かうという分岐もありうるかもしれません。
一方、桃太郎と金太郎が出会う可能性があるのはこのChapter3だけであることも同時に分かります。山道や川、海岸で二人が出会うことはなく、もしそのようなシーンを作ってしまうと、それは全体から見て矛盾のある展開、ということになるのです。



上記の表は、あくまで一例に過ぎません。どのような図式で表記するかは、皆さんがそれぞれ作りやすいやり方でやってみるのが一番です。あくまで、複雑化しやすいゲームシナリオの構造を整理するには、図や表に書いてみるのが有効な手段である、ということを覚えておいてください。
次回は、メインシナリオとサブシナリオの違いについて、説明していく予定です。

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